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H13. 4.10 千葉地裁 平成09(行ウ)6 損害賠償請求事件

H13. 4.10 千葉地裁 平成09(行ウ)6 損害賠償請求事件  主文 一 被告A、同B及び同Cの日本電信電話株式会社の株式の購入に関する本件訴えを却下する。 二 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 三 訴訟費用は原告らの負担とする。  事実及び理由 第一 請求  被告らは、館山市に対し、連帯して五億五七九二万三八七八円及びこれに対する平成九年二月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払をせよ。 第二 事案の概要  本件は、館山市の収入役が公金で日本電信電話株式会社の株式(以下「NTT株」という。)合計一六〇株を購入し保有したことが地方自治法(以下「法」という。)二三五条の四第一項等に反すると主張する原告らが、法二四二条の二第一項四号に基づき、館山市に代位して、被告らに対し、損害賠償請求をした事案である。  なお、立証は、記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。 一 争いのない事実等(証拠を挙示しない事実については当事者間に争いがない。) 1 当事者 (一) 原告らは、館山市の住民である。 (二) 被告らは、以下のとおり、館山市の執行機関ないし補助機関の地位にあった者である。 被告A   収入役(昭和五九年四月一日から昭和六三年三月三一日まで) 被告B   収入役(昭和六三年四月一日から平成四年三月三一日まで) 被告C   収入役(平成四年四月一日から平成八年三月三一日まで) 被告D   市長(平成二年一二月一〇日から平成一〇年一二月九日まで) 2 NTT株の購入とその売却 (一) 被告A及び同Bは、次のとおり、NTT株を購入した(以下、これらの株式を「本件NTT株」という。)。 (1) 被告Aは、昭和六二年一一月七日、NTT株一〇株を二五五〇万円で、同月九日、六〇株を一億五三〇〇万円で購入したが、館山市財政調整基金の現金から代金を支払った。 被告Aは、同月一〇日、NTT株四〇株を一億〇二〇〇万円で購入したが、歳計現金から代金を支払った。 (2) 被告Bは、昭和六三年一〇月二〇日、NTT株五〇株を九五〇〇万円で購入したが、館山市財政調整基金の現金から代金を支払った。 (二) 館山市は、平成八年八月一五日、一億三〇五六万四六〇〇円で本件NTT株を売却した。 3 監査請求と本訴提起 (一) 原告らは、館山市監査委員に対し、法二四二条一項に基づき、平成八年一二月六日、被告A、同B及び同Cの行為によって館山市が被った損害の補填を するために必要な措置を求める監査請求を行い、また、平成九年一月九日、被告Dの行為についても監査請求を行った(以下、これらを「本件監査請求」という。)。(甲二、五三の1・2、弁論の全趣旨) (二) 館山市監査委員は、本件監査請求のうち、被告A及び同Bに関しては、期間徒過を理由に却下し、被告C及び同Dに関しては、請求に理由がないものとして棄却し、原告らに対し、平成九年二月三日付けで、その旨通知した。(甲二) (三) 原告らは、平成九年二月二七日、本件訴訟を提起した。 三 当事者の主張 (本案前の主張) 1 被告A、同B及び同C(監査請求期間徒過)  本件監査請求は、本件NTT株購入の日から一年を経過してされたものであるところ、原告らは、平成八年五月八日の新聞報道によって、被告A及び同Bによる本件NTT株購入の事実を知ったものであり、原告らが本件監査請求をするまで七か月近くも経過しているから、法二四二条二項ただし書所定の「正当な理由」は存在しない。 2 被告C(監査請求と住民訴訟の対象の同一性の欠如)  本件監査請求の対象は、被告Cについては、同被告が収入役に就任してからの株価の下落に伴う損失及び法定利息であったが、本訴請求の内容は、本件NTT株の購入自体に基づく損害賠償であるから、これらの間に同一性がなく、適法な監査請求の手続を経ていない。 3 原告らの反論 (一) 起算日  被告A、同B及び同Cの本件NTT株の購入及びその保有という一連の違法な公金管理は全体として一体の不法行為であり、これと被告Dの不法行為とは共同不法行為の関係に立つ。  そして、被告らによる共同不法行為が終了したのは、本件NTT株を売却した平成八年八月一五日であり、被告らの共同不法行為によって館山市が被った損害額が確定したのも同日である。  原告らは、同日から一年以内の平成八年一二月六日に本件監査請求をしているから、監査請求期間の遵守に欠けるところはない。 (二) 正当な理由  被告A、同B及び同Cの違法な公金管理は、館山市民に秘密に行われたもので、原告らが同被告らの行為の概要を知ったのは、新聞各紙が本件について報道した平成八年五月上旬である。 被告Dは、それ以前から被告A、同B及び同Cの違法な公金管理を知っていたが、平成八年五月二日に至って本件行為について監査請求をするに至った。原告らとしては、館山市長が監査請求をしたのであるか ら、適正な監査がされるのではないかと期待し、監査結果が出されるのを待っていた。しかし、館山市監査委員がした監査は原告らの期待に反した不当なものであり、そのことを原告らが知ったのは平成八年九月一五日付けの館山市広報に公表された監査結果を読んだ時であり、原告らは右監査結果を知ってから、自ら監査請求することを決意し、約二か月半後の平成八年一二月六日までに準備を整えて本件監査請求をするに至ったものである。  原告らは、被告Dが行った監査請求の結果が出るのを漫然と待っていたのではなく、それまでの間にも本件の真相解明のための努力をし、必要とあれば自ら監査請求をする準備をしており、法二四二条一項の「証する書面」とするため、館山市に対し、被告A、同B及び同Cが隠蔽のために作成した虚偽公文書の写しを要求したが、館山市は拒否し続けた。そのため、原告らは監査請求をする準備に重大な支障をきたした。 (三) 監査請求と住民訴訟の対象の同一性  被告Cの収入役在任中における本件NTT株保有という違法行為は、被告A及び同Bと共同不法行為関係にあるから、本訴請求の内容と監査請求との間には同一性がある。 (本案の主張) 1 原告ら (一) 被告A、同B及び同Cについて (1) 不法行為の対象  被告Aは、本件NTT株のうち一一〇株を購入し、収入役在任期間中保有し続けた。  被告Bは、被告Aが購入したNTT株に加え、新たにNTT株五〇株を購入し、収入役在任期間中これらを保有し続けた。  被告Cは、被告A及び同Bが購入した本件NTT株を収入役在任期間中保有し続けた。 (2) 違法性  収入役は、法二三五条の四第一項、二四一条七項、一七〇条一号に基づいて、市町村の歳計現金、基金に属する現金を保管する権限を有している。  右の保管方法については、法二三五条の四第一項、二四一条七項で「政令の定めるところにより、最も確実かつ有利な方法により保管しなければならない」と定められており、同法施行令一六八条の六では「指定金融機関その他の確実な金融機関への預金その他の確実かつ有利な方法により保管しなければならない」と定められている。 現金の保管は、安全確実を絶対条件とし、かつ当該地方公共団体の支払いに即応できるような形において行われるべきものであるから、当該保管中において現金の価値が減少するような保管方法は許されないのであり、元本が絶対的に保障され ている保管方法でなければならない。 右の「最も確実かつ有利な方法」としては、金融機関への預金のほかには、「買い現先の方法」によって有価証券にかえる運用が行政実例上認められているが、これは、証券会社の行う国債証券、地方債証券、政府補償債権等の元本及び利息の支払いが確実な証券を対象とする債権売買業務のうち、条件付売買であって、証券会社が一定期間後にあらかじめ約定した単価および受渡金額により買い戻すことを約して有価証券を売り渡す場合のことであり、本件のように現金を有価証券に代えて運用するようなことは、行政実例の許容するところではなく、違法である。  本件NTT株の購入と保有は、現金を株式投資に運用する行為であり、現金を運用して株式投資をすることは、地方自治法等で禁じられており、被告らは、直ちに本件NTT株を売却し、前記法令に従い、「もっとも確実かつ有利な方法」による保管方法に是正して損害の発生を防止し、損害発生の場合には、適切な損害補填策を講ずるべき義務を負っていたのに、被告らは違法な株式投資を行い、かつ右義務に違反して何らの是正措置も損害補填策も講じなかった。  被告A及び同Bは、館山市財政調整基金に関する現金の運用として同現金で本件NTT株を購入し、これを保有した。これは同現金の管理行為として行ったものであるから、一体として「違法な財産の管理」にあたる。また、右購入は、「違法な財産の取得」にあたり、右購入代金の支払いのための現金の支出は「違法な公金の支出」にあたる。被告Aが歳計現金で本件NTT株を購入し、これを保有した行為は、同現金の運用として行ったものであるが、歳計現金は法二四二条一項の「財産」には含まれないので、右購入は「違法な公金の支出」、又は「違法な財産の取得」にあたる。また、本件NTT株の保有は「違法な財産の管理」にあたり、是正義務、損失補填措置義務に反していることにおいて、「違法に財産の管理を怠る事実」にも該当する。 (3) 共謀  被告Aは、昭和六二年一一月ころから館山市収入役室長のEと協議の上、本件NTT株を購入し、Eに指示して虚偽の金融機関別預金残高総括票等の作成を行っていた。  被告Aは、昭和六三年三月に収入役を退任するに当たり、Eと協議し、同年四月以降もNTT株への投資、運用を続けるとともに、虚偽の金融機関別預金残高総括票を作成していくことを示し合わせた。 そして、被告Bは、収入役に就任して間もない昭和六三年四月初めころ、Eから被告Aが違法なNTT株を投資、運用していたことを知らされ、そのころ、被告A及びEと協議し、本件NTT株への投資運用の事実の隠蔽を求める被告Aの意を受け、Eに指示し、虚偽の金融機関別預金残高総括票を作成していくこととした。  また、被告Bは、自らもEと相談した上、本件NTT株を購入した。  被告Cは、平成四年四月初めころ、A、Bと協議し、同人らから右事実を聞くとともに、右事実を内密にし、隠蔽するように依頼され、引き続き、虚偽の金融機関別預金残高総括票を作成し続けた。  右に述べた共謀の事実経過に照らし、被告Bの収入役在職中の違法な本件NTT株への投資、運用は、被告Aと被告Bの共謀による共同不法行為であり、被告Cの収入役在職中の違法な本件NTT株への投資、運用は、被告A、同B及び同Cの共謀による共同不法行為である。  被告Bは、被告Aと共謀し、被告Aの収入役在職中の違法な本件NTT株への投資、運用の事実を承知しながら、右違法行為を承継した上、引き続き同様の違法行為を継続したものであり、被告Cも、被告A及び同Bと共謀し、被告A及び同Bの各収入役在職中の違法な本件NTT株への投資、運用の事実を承知しながら、右違法行為を承継した上、引き続き同様の違法行為を継続したものである。 (4) 職員賠償責任  法二四三条の二第一項前段の「亡失」とは、失いなくすことであり、同項後段三号の「支出又は支払」とは、予算執行に関係した支出又は支払について規定したものである。  しかるに、被告A、同B及び同Cの違法行為は、収入役として監理している現金を違法を承知の上でNTT株に投資して利殖を図ろうとしたものであり、本件NTT株の購入、保有、売却の全体を包括する行為であるから、右にいう「亡失」、「支出又は支払」には該当しない。また、仮に一面でこれらに該当する部分があったとしても、違法行為の全体を捉えるものではないから、これらで評価するのは適当でない。  仮に職員賠償責任が成立するとすれば、予備的に職員賠償責任を主張する。 (5) 被告A、同B及び同Cの責任  被告A、同B及び同Cは、館山市の収入役として、館山市のために、適正な財産管理を行うべき義務がありながら、本件NTT株を購入、保有し、その結果、館山市に甚大な損害を発生させたから、右被告らは、民 法七〇九条、七一九条に基づき、館山市の被った損害を賠償すべき義務がある。 (二) 被告Dについて (1) 被告Dの権限と義務  被告Dは、館山市長として、館山市を統轄、代表して(法一四七条)、館山市の事務を管理、執行し(平成一一年法律第八七号による改正前の法一四八条一項)、館山市の会計を監督し、財産の取得、管理、処分を行う(法一四九条五、六号)権限及び義務を有し、さらに、収入役を含む補助機関たる職員を指揮監督する権限及び義務を有している。したがって、被告Dは、収入役の行う会計事務を管理監督し、地方自治法等関係法令に従い、適正な会計事務が行われるよう指揮、監督すべき義務がある。  収入役は、現金及び財産の記録管理を行うこと(法一七〇条二項五号)とされ、館山市においては、収入役は、毎月、金融機関別預金残高総括表を作成して館山市監査委員に提出し、同監査委員は、出納検査結果に基づき、毎月、例月出納検査報告書を作成して市長及び市議会に提出している。また、収入役は、決算を調整し、これを市長に提出することになっている(法一七〇条二項七号)。  したがって、被告Dは、収入役や監査役から提出される右書類等を検討することによって会計事務の実情を把握することが可能であり、さらに、銀行や証券会社から取引内容や残高についての報告書が定期的に提出されており、特に証券会社は、「現先」「転換社債」「株式」についての取引報告書、預かり証の発行や残高報告書の提出をすることになっているので、被告Dは、これらの書類の照合、点検によって預金、「現先」や「転換社債」及び「株式」による現金の運用の実情を掌握することが可能であった。 (2) 被告Dの義務違反  被告Dは、就任当初より、これらの関係書類を検討調査することにより本件の違法な公金管理の事実を知っていながら、これを容認し、何ら是正措置をとることなく、違法行為を継続するに任せたものであるから、故意に適正な財産管理を怠った責任がある。  仮に故意責任が認められないとしても、被告Dが平成八年四月一五日ころまで本件公金の違法管理の事実を知らなかったとすれば、市長として行うべき前記義務を怠った結果であり、過失により適正な財産管理を怠った責任を負う。  また、被告Dは、同日以降も、本件公金の違法管理により館山市が被った損害について、収入役に対する損害賠償請求を含め、何ら適切な損害回復 措置を講じておらず、適正な財産管理を怠っていたから、右についても故意又は過失による責任がある。 (3) 被告Dの責任  以上のとおり、被告Dは、財務会計上の行為として、違法に財産の管理を怠る事実があり、民法七〇九条に基づき、館山市の被った損害を賠償すべき義務がある。 (三) 被告ら四名の共同不法行為について  被告A、同B及び同Cによる共同不法行為に、被告Dの右不法行為が加わり、これらがあいまって、館山市に損害を発生させたから、被告らは共同不法行為責任があり、民法七〇九条、七一九条により連帯して館山市が被った損害を賠償すべき責任がある。  被告A、同B及び同Cの各収入役在職中の不法行為については、法二四二条の二第一項四号所定の当該職員に対する損害賠償請求であり、被告A及び同Bの退職後の行為については、被告Dの「財産の管理を怠る事実」の相手方としての損害賠償の請求である。  また、被告A、同B及び同Cに対する請求全体が被告Dの「財産の管理を怠る事実」の相手方としての損害賠償の請求ということもできる。 (四) 館山市の被った損害 (1) 本件NTT株の購入による損害  本件NTT株の購入代金額三億七五五〇万円、遅延損害金一億六〇〇二万三一四九円及び売買委託手数料及び消費税相当額六三万三七五○円の合計五億三六一五万六八九九円から、本件NTT株の売却額一億三〇五六万四六〇〇円、本件NTT株の配当金三二〇万八〇〇〇円の合計一億三三七七万二六〇〇円を控除すると、四億〇二三八万四二九九円となる。 (2) 得べかりし利益  各被告の在任期間ごとの得べかりし利益(少なくとも本来あるべき歳計現金及び基金に属する現金が、適正な保管方法として指定金融機関に預金した場合に得られるはずの利息相当額)は次のとおりである。 ア 被告Aについて  被告AがNTT株を購入した昭和六二年一一月当時の指定金融機関の定期預金の最高利率は年四・一四パーセントであるから、最後の購入日である昭和六二年一一月一〇日から退職日である昭和六三年三月三一日までの間について、全購入代金である二億八〇五〇万円に対する右利率による利息相当額は、四五〇万九九〇七円となる。  右に加えて右金員に対する昭和六三年四月一日から、本件NTT株を売却した平成八年八月一五日まで民法所定の年五分の割合による損害金は、一八八万四〇五六円である。 イ 被告Bについて  被告Bが 収入役に就任した昭和六三年四月一日から、同人がNTT株を購入した日の前日である昭和六三年一〇月一九日までの間の、被告Aの右全購入代金相当額二億八〇五〇万円に対する、被告B就任当時の定期預金の最高利率である年四・一四パーセントの割合による利息相当額は、六三七万七四六六円となる。  被告BがNTT株を購入した昭和六三年一〇月二〇日から退職日である平成四年三月三一日までの間について、被告Aの右全購入代金相当額と被告Bの購入金額の合計金三億七五五〇万円に対する右購入当時の定期預金の最高利率である年四・一四パーセントによる利息相当額は金五三四三万三〇三四円である。  右に加えて右金員に対する平成四年四月一日から平成八年八月一五日まで民法所定の年五分の割合による損害金は、一三〇四万八八二〇円である。 ウ 被告Cについて  被告Cが収入役に就任した平成四年四月一日から、退職日である平成八年三月三一日までの間について、被告A及び同Bにかかる全購入代金相当額三億七五五〇万円に対する、被告Cの就任当時の定期預金の最高利率である年五パーセントの割合による利息相当額は、七四八九万四八〇八円となる。  右に加えて、右金員に対する平成八年四月一日から平成八年八月一五日まで民法所定の年五分の割合による損害金は、一三九万一四八八円である。 (3) (1)と(2)の合計額は、五億五七九二万三八七八円となる。 (4) 各被告ごとに、かつ購入と保有ごとに責任が分断される場合の各被告ごとの損害額 ア 被告Aについて  購入責任の金三億一一五〇万七三〇三円と、保有責任の金六三九万三九六三円(前記利息相当額及び損害金)の合計金三億一七九〇万一二六六円が請求金額となる。 イ 被告Bについて  購入責任の金九〇八七万六九九六円と、保有責任の金七二八五万九三二〇円(前記利息相当額及び損害金)の合計金一億六三七三万六三一六円が請求金額となる。 ウ 被告Cについて  保有責任として、前記利息相当額及び損害金の合計金七六二八万六二九六円が請求金額となる。 エ 被告Dについて  各被告への請求金額の合計額である金五億五七九二万三八七八円が請求金額となる。 (五) 館山市条例・昭和天皇の崩御に伴う職員の懲戒免除及び職員の賠償責任に基づく債務の免除に関する条例(平成元年三月二八日条例第三号。 以下「債務免除条例」という。)の不適用について  債務免除条例は、公務 員等の懲戒免除等に関する法律に基づくものであるが、同法五条ただし書は、本人の犯罪行為による賠償の責任に基づく本人の債務については、この限りでないと定めている。本件の場合、被告らの負う職員賠償責任は被告らの背任行為に基づくものであるといえ、少なくとも被告らは当該行為の一部につき既に虚偽公文書作成罪で有罪判決を受けている。  また、有罪判決の対象とはされていなくとも、被告らの不法行為の全体にわたって、同様の虚偽公文書作成罪に該当する違法行為があるので、被告らの負う責任は、被告らの犯罪行為によるものというべきである。  したがって、被告らには、債務免除条例の適用が排除される。 2 被告Aの主張 (一) 被告Aの行為は本件NTT株を購入した時点で完結しており、共同不法行為が成立する余地はない。  株式を購入することが違法であるとしても、購入した株式は市の財産であるから、それを保有することは収入役としての義務であり、保有したこと自体を違法ということはできない。  仮に本件NTT株を保有したことが違法であるとしても、被告Aの行為は、収入役の地位にあった最後の日である昭和六三年三月三一日には終了している。  被告Aは、被告Bの本件NTT株購入には全く関与していないし、被告B及び同Cと共謀してもいない。 (二) 原告らは、被告Dの「財産の管理を怠る事実」の相手方としての損害賠償の請求であると主張するが、そうすると、損害賠償が補填されるまではいつまでも住民訴訟が提起できることになり、厳格な監査請求期間を定めた法の規定の趣旨が損なわれる。 (三) 公務員等の懲戒免除等に関する法律三条、五条の規定並びにこれに基づく債務免除条例三条によると、法二四三条の二の規定による職員の賠償責任に基づく債務で昭和六四年一月七日前における事由によるものは将来に向かって免除する旨定められているから、仮に被告らが賠償義務を負担するとしても、その賠償責任は右条例の定めにより免除されている。  原告らは、被告らの行為は、背任罪もしくは虚偽公文書記載罪に該当するから、債務免除条例の適用はないと主張する。  しかし、背任罪は、自己の利益を図る目的もしくは本人に損害を加える目的が必要であるところ、被告らは、本件NTT株の購入が自己の権限外でかつ運用方法として不適法であるとの認識が乏しいまま、市の財政基盤の強化に役立つものと考えて購入したもの であるから、自己の利益を図る目的も、本人に損害を加える目的もなかったことが明らかである。  また、虚偽公文書記載は、本件NTT株購入による損害発生後の事情であり、債務免除条例の適用には影響がない。 3 被告Bの主張 (一) 本件NTT株の購入は、法律的にいえば自治体を買主とする売買契約である。この売買契約の締結権限は、原則として自治体の代表者である長にしかない。被告Bの本件NTT株購入契約は、館山市名義の無権代理行為であり、その効果は法律的には館山市に帰属しない。被告Bが収入役としてなした代金支払いは、この売買契約が館山市に帰属すると信じてしたものの、客観的には原因のない支出であったこととなる。 本件で問題となる被告Bの財務会計上の行為とは、この支出行為となるはずであり、この行為は右支出で完結している。法律的には、購入した本件NTT株は館山市の所有ではなかったのであるから、館山市が所有していないものを館山市の機関として収入役がこれを保管することも考えられない。 (二) 原告らの主張は、意味不明な保有なる概念を前提とするもので失当である。 (三) 原告らは、被告Bの退職後の行為については、被告Dの「財産の管理を怠る事実」の相手方としての損害賠償の請求であると主張するが、これらは、当該財務会計上の行為を現在の怠る行為の相手方とすることによって常に監査請求をしうることになり、厳格な監査請求期間を定めた法の規定を無意味とするものである。  また、被告Dには、何らの怠る事実はないから、原告らの主張はその前提を欠いている。 (四) 被告Aの主張(三)と同じ。 4 被告Cの主張 (一) NTT株の購入は、有利な現金の保管の一方法として許容される場合も一概にないとはいえない。  収入役等の地方自治体の出納職員等の賠償責任につき、地方自治法二四三条の二は、それらの職員の所為が同条に定める行為に該当する場合は、どの賠償責任を生ずる場合を原則として「故意または重大な過失」による場合に限定するとともに同条により職員が賠償責任を負う場合は民法の賠償責任に関する規定を適用しないと定めている。  また、当該職員はそれぞれの職分に応じ、かつ、当該損害の発生の原因となった程度に応じて賠償の責に任ずるものとすると定めている。  被告Cは、本件NTT株の購入やその対価としての市の公金の支出に共謀はしていないし、その他具体的な行為 について何らの関与もしておらず、右行為が違法であるとしても被告Cは何らの責任も負担するものではない。 (二) 被告Aの主張(三)と同じ。 5 被告Dの主張 (一) 地方自治法は、収入役が当該普通地方公共団体の会計事務をつかさどることを定めるとともに、収入役が当該普通地方公共団体の長から独立した一定の権限を有することを定めている(法一七〇条)から、収入役は当該普通地方公共団体の長の単なる履行補助者的地位にあるものではなく、また、当該普通地方公共団体の長は収入役の行う会計事務を直接に管理する立場にあるものではない。原告らは、法一四九条五、六号を根拠に被告Dに責任があると主張するが、歳計現金については、そもそも被告Dの事務に属しないし、財政調整基金に属する現金については、被告Dに一般的な権限があるものの、その管理行為は収入役の専権に属するものであるから、原告らの主張は失当である。  収入役が担当する会計事務については、監査委員が監査権限を有しているから(法一九九条)、被告Dが収入役の行う会計事務を管理する権限があるとの原告らの主張は誤りである。  また、被告Dは、例月出納検査報告書等の書類は閲覧していたものの、これらの書類には、本件NTT株購入の事実は全く記載されていないから、これらの事実を知ることはできなかった。 (二) 被告Dは、平成八年四月一五日、F収入役から報告を受け、同年五月二日、法二四三条の二に基づき、館山市監査委員二名に対し、本件NTT株購入問題について、監査を請求し、さらに、同月七日、市議会全員協議会に報告するとともに、記者会見を行い、市民に事実を公表するとともに、同年七月一七日、早急に換金するよう指示をした。  したがって、被告Dには、違法に財産の管理を怠る事実は存在しない。 第三 当裁判所の判断 一 被告A、同B及び同Cの本案前の主張(監査請求期間徒過)について 1 原告らは、被告A及び同Bが本件NTT株を購入したこととその後保有し続けたこととは一連・一体の違法な保管行為として把握されるべきであることを前提として本件NTT株の売却時をもって監査請求期間が起算されると主張する。しかしながら、本件においては、被告A及び同Bが本件NTT株を購入したこと自体が財務会計上の完結した行為であることは明らかであって、本件NTT株の購入とその後の保有とは別個の行為とみるべきものであるから 、右主張はその前提を採用することができない。  しかし、原告らは、本件監査請求において被告A及び同Bの本件NTT株購入行為自体についての監査請求をしており、本件訴訟においても右購入行為自体が不法行為となる旨の主張もしているので、右被告らの本件NTT株の購入に関し監査請求期間を徒過しているか否かについて、以下検討する。 2 前記争いのない事実等記載のとおり、被告A及び同Bが本件NTT株を購入したのは昭和六二年一一月七日から昭和六三年一〇月二〇日までであるが、本件監査請求がされたのは平成八年一二月六日であるから、本件監査請求は、本件NTT株購入の日から一年を経過してされたものである。  そこで、本件監査請求について、法二四二条二項ただし書の「正当な理由」が認められるかについて判断する。 (一) 証拠(甲三七ないし五〇、五四ないし一〇〇〔枝番を含む〕)及び弁論の全趣旨によれば、本件NTT株の購入は普通地方公共団体における現金の出納及び保管の権限を有する収入役の指示により、極めて秘密裡のもとに行われ、監査委員に提出する金融機関別預金残高総括票に虚偽の記載を行うなどしていたものであり、収入役室(現会計課)の一部職員以外の職員はもとより住民には知り得る状況になかったものと認められる。 (二) ところで、住民監査請求は、当該行為が秘密裡にされた場合、法二四二条二項ただし書にいう「正当な理由」の有無は、特段の事情がない限り、普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか、また、当該行為を知ることができたと解される時点から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁昭和六二年(行ツ)第七六号昭和六三年四月二二日第二小法廷判決・判例時報一二八〇号六三頁参照)。  本件についてこれをみるに、証拠(甲三ないし八)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができ、この認定を覆すに足りる的確な証拠はない。 (1) 被告Cは、平成八年三月三一日に館山市の収入役を退任し、後任のF収入役との間で事務引継ぎを行った。F収入役は、その際、被告A及び同B両元収入役が本件NTT株を購入し、資金運用をしていたことを知り、事実関係を確認した上、同年四月一五日、館山市長である被告Dにその旨報告した。 (2) 被告Dは、同年五月二日、法二四三 条の二の規定に基づき、館山市監査委員に対し、被告A、同B及び同Cの本件NTT株購入をめぐる収入役としての行為について監査請求を行った。 (3) また、被告Dは、平成八年五月七日、収入役によるNTT株購入問題について館山市議会全員協議会で報告を行うとともに、同日報道関係機関に対して記者発表を行った。  この発表を受け、即日テレビ、ラジオによる報道がされるとともに、翌五月八日には地元新聞をはじめ新聞各紙による報道がされた。この新聞記事には、本件NTT株購入に関し、市の収入役(新聞によっては実名入りのものもあった)であった者が市の公金を支出して、昭和六二年一一月NTT株一一〇株を二億八〇五〇万円、昭和六三年一〇月NTT株五〇株を九五〇〇万円で取得し、その後株価の下落により当時合計で二億四七八七万円の含み損が館山市に発生しているという事件の内容がかなり詳細に記載されていた。  以上の事実が認められる。  そうすると、館山市の住民である原告らは、遅くとも平成八年五月八日の地元新聞をはじめ新聞各紙の報道記事によって、被告A及び同B両元収入役による本件NTT株購入の事実を容易に知り得たものであって、この時から相当な期間内に監査請求をすることが十分可能であったものと認められる。  しかるに、原告らが被告A、同B及び同Cについて監査請求をしたのは平成八年一二月六日であり、平成八年五月八日から既に七か月近く経過しているのであるから、法二四二条二項ただし書で規定する「正当な理由」があるとは認められず、同被告らの本件NTT株の購入に関する本件訴えは、適法な住民監査請求を経ていない不適法なものである。 (三) 原告らは、館山市長である被告Dによる監査請求の結果が出るのを待っていたと主張するが、右のような事情が「正当な理由」についての右判断を左右するものとはいえない。 3 ところで、原告らは、被告Cが、被告A及び同Bの本件NTT株購入につき、共同不法行為責任を負うと主張する。  右購入当時には収入役に就任していなかった被告Cについて共同不法行為が成立するとの理論構成の是非はともかく、その主張を前提にすると、被告Cの本件NTT株購入に関する不法行為についても、その行為があった日は、被告A及び同Bが本件NTT株を購入した日と同じになるから、同被告の本件NTT株の購入に関する本件訴えも、前示のとおり、適法な住民監査 請求を経ておらず、不適法である。 二 被告A、同B及び同Cの責任について 1 原告らは、被告A及び同Bによる本件NTT株の購入と右被告ら及び被告Cによる本件NTT株の保有が、被告A、同B及び同Cの共謀に基づく一連・一体の行為であるとし、全体として違法性を帯びると主張するが、右主張を採用することができないことは、前示のとおりである。 2 そこで、本件NTT株保有自体の違法性について検討する。  原告らは、違法性の根拠として、法二三五条の四第一項、二三五条の四第一項、二四一条七項、一七〇条一号等の規定をもって本件NTT株を保有したことが違法性を帯びると主張する。しかし、法二三五条の四第一項は、「普通地方公共団体の歳入歳出に属する現金(以下「歳計現金」という。)は、政令の定めるところにより、最も確実かつ有利な方法によりこれを保管しなければならない。」と規定し、現金の保管の方法についての作為義務を定めているが、既に現金で購入し、保有するものについても常に「最も確実かつ有利な方法」(現金化を含む)を選択して保管替えしなければならないとの作為義務を定めたものではない。また、法二三五条の四第一項、二四一条七項、一七〇条一号等の規定をもって右義務があるものということもできない。  もっとも、株式の取得が地方自治体の現金等の保管方法としては適当でないというべきであるから、状況によっては、右被告らに右の作為義務を認める余地はある。そして、右の義務は、保有それ自体によって地方自治体に損害が及ぶことを職員が回避すべき判断をなすべき状況にあることを要すると解すべきであるから、株式の保有が望ましいことではないからといって即時に当該職員に作為義務が発生するものではなく、当該職員が株式の保有を解消するとしても、いつ、どのような売却をするのが地方自治体にとって適当かについての判断の誤りが認められるという場合であることを必要とすると解すべきである。本件においては、① 証拠(甲一五)によると、NTT株が保有期間中下落の傾向にあったことは認められるものの、② その一方、期間中に株式相場全体の状況は必ずしも下落傾向を示すことなく推移していたことも当裁判所に顕著であり、このような状況からすると、軽々に当該職員に作為義務違反があったとすることはできないし、本件全証拠をもってしても、右被告らの保有を継続した判断について違法 があったというには足りない。  また、原告らは、本件NTT株の保管が法二四三条の二第一項本文の「現金の忘失」あるいは民法七〇九条の不法行為に当たると主張する。しかし、本件NTT株の保管をもって「現金の忘失」と評価することはできないし、地方自治法における職員の違法行為に関する規定は民法七〇九条の特則であるから、原告らの主張は失当である。 3 原告らは、被告A及び同Bの退職後の行為並びに被告A、同B及び同Cに対する請求全体が被告Dの「財産の管理を怠る事実」の相手方としての損害賠償の請求でもあると主張する。しかし、被告A、同B及び同Cが本件NTT株の保有について損害賠償責任を負わないことは右のとおりであり、被告Dには怠る事実を認めることができないことは後記説示のとおりであるから、原告らの主張はその前提を欠き、失当である。 三 被告Dの責任について 1 原告らは、被告Dが、就任当初より、被告A、同B及び同Cによる本件の違法な公金管理の事実を知っていながら、これを容認し、何ら是正措置をとることなく、違法行為を継続するに任せた旨主張する。しかし、被告Dは、前示のとおり、平成八年四月一五日、F収入役からの報告を受けて元収入役らによる本件NTT株の購入及び保有の事実を知ったものであるから、故意に適正な財産管理を怠ったものと認めることはできない。 2 次に、原告らは、被告Dが平成八年四月一五日ころまで本件公金の違法管理の事実を知らなかったとすれば、過失により適正な財産管理を怠った責任があると主張する。しかし、本件NTT株の保有自体によって館山市に損害が発生していたと判断し得ないことは前示のところから明らかである上、前掲各証拠によれば、本件NTT株の購入は、被告Dが館山市長に就任する以前に、現金の出納及び保管の権限を有する収入役の指示により、極めて秘密裡のもとに行われていたものであって、被告Dがこれを防止することはできなかったものであり、被告Dが市長に就任後も、収入役により従前と同様に監査委員に提出する金融機関別預金残高総括票に虚偽の記載を行うなどされ、本件NTT株購入の事実は全く記載されておらず容易に発覚しにくい状態にされていたことが認められ、また、収入役の権限内容及び被告Dが収入役の行う会計事務を管理する権限があるとはいえないこと等に照らし、被告Dにおいて、適正な財産管理を怠ったものと認める ことはできない。 3 さらに、原告らは、被告Dが平成八年四月一五日以降も、本件公金の違法管理により館山市が被った損害について、収入役に対する損害賠償請求を含め、何ら適切な損害回復措置を講じておらず、適正な財産管理を怠っていたとも主張する。しかし、被告Dは、前示のとおり、平成八年四月一五日、F収入役から元収入役らによる本件NTT株の購入、保有についての報告を受け、同年五月二日、法二四三条の二に基づき、館山市監査委員に対し、本件NTT株購入問題について、監査を請求し、さらに、同月七日、館山市議会全員協議会に報告するとともに、報道機関に対する記者会見を行い、市民に事実を公表したものであり、さらに、弁論の全趣旨によれば、被告Dは、同年七月一七日、関係部署に命じて早急に換金するよう指示をし、その結果、同年八月一五日、本件NTT株を売却したことが認められ、これらの事実に照らすと、被告Dが財産管理を怠ったとは到底認めることはできず、他に被告Dが違法に財産の管理を怠ったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 第四 結論  よって、本件訴えのうち被告A、同B及び同Cの本件NTT株購入に関する請求部分は、適法な監査請求を経ていない不適法なものであるから却下し、原告らのその余の請求は、いずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条及び民事訴訟法六一条、六五条に従い、主文のとおり判決する。 千葉地方裁判所民事第三部 裁判長裁判官 園部秀穂 裁判官 今泉秀和 裁判官 吉川昌寛は、転補につき、署名押印することができない。 裁判長裁判官 園部秀穂

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更新日:2008年12月2日 2時18分

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0264)行政判例平成13年その41119604462

H13. 4. 9 東京高裁 平成13(行コ)17 特別土地保有税義務免除不許可処分取消請求控訴事件

H13. 4. 9 東京高裁 平成13(行コ)17 特別土地保有税義務免除不許可処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所 平成11年(行ウ)第86号)  主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。  事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人の控訴の趣旨 (1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人の請求を棄却する。 2 被控訴人の本訴請求の趣旨  控訴人が被控訴人に対し,平成8年9月19日付けでした原判決別紙物件目録記載の土地に係る平成8年度分の特別土地保有税の納税義務を免除しない旨の決定を取り消す。 第2 事案の概要及び当裁判所の判断  本件の事案の概要,前提となる事実,争点に対する当事者双方の主張等は,原判決の「事実及び理由」欄の「第二 事案の概要」の項に記載されているとおりであるから,この記載を引用する。また,当裁判所も,本件土地は,平成8年1月1日の基準日において,恒久的な利用に供される建物の敷地の用に供する土地と認められ,特別土地保有税の納税義務を免除する要件として地方税法603条の2第1項1号に定めるところを満たしているといえるから,これが満たされていないとしてされた本件処分は,上記免除対象土地の該当性の判断を誤ったものであって,違法というべきであり,その取消しを免れないものと判断する。その理由は,原判決がその「事実及び理由」欄の「第三 当裁判所の判断」の項で認定,説示するところと同一であるから,この認定,説示を引用する。 第3 結論  よって,被控訴人の本訴請求を認容した原判決は相当であり,控訴人の本件控訴には理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第15民事部 裁判長裁判官 近藤崇晴 裁判官 合田かつ子 裁判官 宇田川基

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更新日:2008年12月2日 2時13分

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0264)行政判例平成13年その4449149982415550137044

H13. 3.30 東京地裁 平成12(行ウ)186 戒告処分取消請求事件

H13. 3.30 東京地裁 平成12(行ウ)186 戒告処分取消請求事件  主文 一 原告の請求を棄却する。 二 訴訟費用は原告の負担とする。  事実及び理由 第一 請求  大蔵大臣が原告に対し平成一二年六月二〇日付け蔵金第六〇八号でした戒告処分を取り消す。 第二 事案の概要  本件は、公認会計士の登録を受け、監査法人の社員に就任していた原告が、他の公認会計士の補助者として監査業務を行ったところ、大蔵大臣が、右の行為は、公認会計士法三四条の一四に違反し、同法三一条に該当するとして、原告に対して戒告の懲戒処分を行ったことから、右処分を不服とする原告が、右処分の取消しを求めている事案である。 一 公認会計士法(平成一一年法律第一六〇号による改正前の法。以下「法」という。)の定め 1(一) 公認会計士は、他人の求めに応じて報酬を得て、財務書類(財産目録、貸借対照表、損益計算書その他財務に関する書類をいう。)の監査又は証明をすることを業とする(法二条一項)。 (二) 公認会計士は、前項に規定する業務の外、公認会計士の名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の調製をし、財務に関する調査若しくは立案をし、又は財務に関する相談に応ずることを業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない(同条二項)。 (三) 法二条一項の規定は、公認会計士が他の公認会計士又は監査法人の補助者として同項の業務に従事することを妨げない(同条三項)。 2(一) 公認会計士は、法五章の二の定めるところにより、監査法人を設立することができるところ、監査法人は、①社員は公認会計士のみであること、②社員の数は五人以上であること、③社員はすべて業務を執行する権利を有し、義務を負うこと、④社員のうちに、法三〇条又は法三一条の規定により業務の停止の処分を受け、当該業務の停止の期間を経過しない者等のいないこと、⑤業務を公正かつ的確に遂行することができる人的構成及び施設を有することとの各要件を備えなければならない(法三四条の二、三四条の四)。 (二) 監査法人は、法二条一項の業務を行うほか、その業務に支障のない限り、定款で定めるところにより、法二条二項の業務等を行うことができる(法三四条の五)。 (三) 監査法人は、その社員以外の者に監査又は証明の業務を行わせてはならない(法三四条の一二第一項)。 (四) 監査法人の社員 は、自己若しくは第三者のためにその監査法人の業務の範囲に属する業務を行い、又は他の監査法人の社員となってはならない(法三四条の一四)。 3 公認会計士又は監査法人でない者は、法律に定める場合を除く外、他人の求めに応じ報酬を得て法二条一項に規定する業務を営んではならない(法四七条の二)。 4 公認会計士に対する懲戒処分は、①戒告、②一年以内の業務停止、③登録の抹消の三種とされ(法二九条)、大蔵大臣は、公認会計士が法又は法に基づく命令に違反したときは、右の各懲戒処分をすることができる(法三一条)。 二 前提となる事実(各項末尾掲記の証拠等によって認められる。) 1(一) 原告は、昭和五九年に公認会計士の登録をした。 (当事者間に争いがない事実) (二) 公認会計士Aは、昭和六三年八月ころ、株式会社ココ山岡宝飾店(以下「ココ山岡」という。)との間で、商法特例法に基づく会計監査業務を受任した。 (当事者間に争いがない事実) (三) 原告は、Aからの依頼を受け、Aが締結したココ山岡との間の商法特例法二条に基づく財務書類の監査契約に基づき、公認会計士Bとともに平成元年三月末事業年度から平成八年三月末事業年度までのココ山岡に係る監査証明業務に補助者として従事し、売上及び売上債権関係の勘定科目の監査を担当していた。 (乙三、同四) (四) 原告は、Aに対し、自己が監査に従事した監査日数等を記載した出面を提出し、Aがココ山岡から受領した監査報酬について、その一部を受領していた。 (乙一、同四) (五) 原告は、平成二年九月から平成四年九月までは監査法人芹沢会計事務所の社員、平成五年七月からは東京赤坂監査法人の社員の地位にあった。 (乙四) (六) 監査法人芹沢会計事務所及び東京赤坂監査法人は、いずれもその定款において「財務書類の監査又は証明の業務」を目的として定めている。 (乙七、同八) 2 本件処分の経緯 (一) ココ山岡の会計監査人であるAについて、平成一〇年七月一七日、法三〇条該当事実及び法二四条違反の事実があるとして、大蔵大臣に対し、法三二条一項に基づいて事実の報告及び措置請求がなされた。  そこで、大蔵大臣は、Aの監査証明業務に係る調査、審問及び聴聞を行うとともに、これと関連して、平成元年三月末事業年度から平成八年三月末事業年度までのココ山岡に対するAの監査証明業務の補助者として従事していた原告及びBについて 、法三四条の一四違反の事実も思料されたことから、両名に対し、法三三条一項一号に基づき、平成一一年五月一一日、平成一二年四月一三日、同月二四日の計三回にわたり審問を行い、法三二条四項及び行政手続法一三条一項一号に基づき同年五月九日に聴聞を行った。 (乙二ないし同五、弁論の全趣旨) (二) 大蔵大臣は、平成一二年六月二〇日、原告に対し、原告が平成二年九月から平成四年九月までは監査法人芹沢会計事務所の社員、平成五年七月からは東京赤坂監査法人の社員に就任しており、監査証明業務を行うことを業とする監査法人の社員の地位にありながら、Aの依頼を受け、ココ山岡に係る平成元年三月末事業年度から平成八年三月末事業年度までの監査証明業務に補助者として従事していたことが、法三四条の一四に違反するとして、法三一条に該当することを理由に、戒告の懲戒処分(以下「本件処分」という。)を行った。 (甲一) (三) なお、大蔵大臣は、Bについても、平成一二年六月二〇日、昭和五九年一一月から監査法人芹沢会計事務所の社員の地位にありながら、Aの依頼を受け、ココ山岡に係る平成元年三月末事業年度から平成八年三月末事業年度までの監査証明業務の補助者として従事していたことが、法三四条の一四に違反するとして、法三一条に該当することを理由に、原告に対するのと同様に戒告の懲戒処分を行った。 (乙六) 三 当事者双方の主張 (被告の主張) 1 監査法人が営利を目的とする合名会社とは異なり、複数の公認会計士による適正な監査を組織的に行うために特別に設けられた制度であって、社員相互の緊密な協力関係を維持し、監査法人制度の健全な発展を図るため、監査法人の実質が損なわれるおそれのある社員の競業を禁止すべきであるとの趣旨に基づいて、法三四条の一四は、他の社員の同意の有無にかかわらず、監査法人の社員が監査法人とは別個に、自己若しくは第三者のためにその監査法人の業務の範囲に属する業務を行い、又は他の監査法人の社員となることを絶対的に禁止したものである。  そして、「自己若しくは第三者のために」とは、右の立法趣旨からすれば、自己の名及び計算においてする場合はもとより、他人の代理人等その名称の如何を問わず、他人の計算においてする場合をも広く含むと解すべきである。  また、「監査法人の業務の範囲に属する業務」とは、法三四条の五に定める業務の範囲と同義であり、こ れによれば「第二条第一項の業務」と解される。そして、法二条一項は、「公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする」と規定するところ、法四七条の二が、公認会計士又は監査法人でない者の業務の制限として、「第二条第一項の業務」との要件のほかに、「他人の求めに応じ報酬を得て」との要件を規定していることからすれば、法四七条の二や法三四条の五に規定する「第二条第一項に規定する業務」又は「第二条第一項の業務」とは、「財務書類の監査又は証明をすること」であって、いずれも「他人の求めに応じ報酬を得て」ということをその要件としていないものと解される。そうであるとすれば、法三四条の一四の「監査法人の業務の範囲に属する業務」とは、法二条一項の業務、すなわち、「財務書類の監査又は証明をすること」を意味すると解すべきである。  しかして、法は監査及び証明の定義を定めていないが、「監査」とは、他人の作成した決算書類の記帳計算に不正誤謬がないかを検し、その決算書類が当該企業の真の財政状態及び営業成績を現わすように適正に調製されているかどうかを検査することをいい、「証明」とは、監査の結果に基づき他人の作成した財務書類が適法正確であることを確認する行為であると解されていることからすれば、監査業務を補助者として行うことも、右「監査」の行為に該当することは明らかである。 2 これを本件についてみると、原告は、監査法人の社員の地位に就任した後も、Aが代表して締結したココ山岡との間の商法特例法二条に基づく財務書類の監査契約に基づき、ココ山岡に係る監査証明業務を補助者として行い、これによりAがココ山岡から受領した監査報酬の一部を受領していたものである。  したがって、原告の行為は、ココ山岡の「財務書類の監査」を行ったものであり、法三四条の一四により禁止される「監査法人の業務の範囲に属する業務」を行ったものと認められるから、原告は、監査法人の社員でありながら、監査法人とは別個に、自己又は第三者のために監査法人の業務に属する範囲の業務を行ったものとして、法三四条の一四に違反し、ひいては法三一条に該当するものと認められる。 (原告の主張) 1 法三四条の一四にいう「監査法人の業務の範囲に属する業務」とは、法三四条の五により、法二条一項の業務と定められているとおりであるが、法二条一項の業務 とは、「他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすること」、すなわち、監査証明業務のことをいうのであり、法的な責任主体となって業務を行うことをいうのは明らかである。  そして、監査補助者とは、会計監査人が被監査会社に対して負う監査証明業務という債務を履行するために使用する履行補助者のことであるが、履行補助者自身が被監査会社の求めに応じて監査証明業務を履行する地位に立つものではないから、監査法人の社員が、他の公認会計士又は監査法人が被監査会社に対して監査証明業務という債務を履行するに当たり、単に履行補助者として、他の法的責任主体の指示又は指揮命令下で監査業務に事実上従事する場合は、法二条一項にいう監査証明業務には該当しないというべきである。  また、法三四条の一四は、監査法人の業務の範囲に属する業務の執行と他の監査法人の社員への就任とを競業禁止の対象行為としているところ、それが並列して規定されているとおり、前段の監査法人の業務の範囲に属する業務の執行とは、後段の他の監査法人への就任と同等に評価されるもの、すなわち監査証明業務を執行する権限を有し、かつ、その責任を負う法的責任主体として業務を行うことを意味するものであって、そのような行為こそが、社員相互の緊密な協力関係の維持や監査法人制度の健全な発展を害するものとして、法三四条の一四が規制しようとしているものと解すべきである。  さらに、同条には「自己若しくは第三者のために」との要件が定められているが、行為の経済上の結果が第三者に帰属するとは、第三者が契約から生じる利益を享受し、かつ、それに伴う責任を負担するという意味であり、使用人として他の会社の業務に従事したとしても、それは業務禁止の対象とはならないものと解すべきである。そこで、監査法人の社員が自ら監査証明業務を行うこと、他の公認会計士又は監査法人と共同して監査証明業務を行うこと、他の監査法人を代表して監査証明業務を行うことは、「自己若しくは第三者のために」監査証明業務を行うことに当たるというべきであるが、監査補助業務はあくまで責任主体である他の公認会計士又は監査法人の指示又は指揮命令下で行われるのであるから、監査補助者は「自己若しくは第三者のために」監査証明業務を行う者には当たらないというべきである。  したがって、他の公認会計士又は監査法人の監査補助者として従 事するだけでは、法三四条の一四に違反しないというべきである。 2 法二条三項の規定  また、法二条三項は、公認会計士が他の公認会計士又は監査法人の補助者として法二条一項の業務に従事することを妨げないとしているが、右の規定からして、補助者として従事することが法二条一項の業務に該当しないことは明らかである。  「他人の求めに応じて」という要件は、内部監査と外部監査を峻別するためのものであり、法二条一項にいう「他人」とは被監査会社のことを指すものであるから、仮に補助者として監査証明業務に従事することが法二条一項の業務に含まれるとすると、法二条一項は、公認会計士である補助者は、被監査会社等委嘱者の求めに応じて報酬を得て監査業務に従事することを業とするという意味の条項となるが、このような条項は、委嘱者との間で監査契約の当事者とならない補助者の地位と矛盾することとなり、妥当でない。  したがって、法二条一項に規定する業務とは、自らが責任主体となって監査証明業務を行うことであり、補助者としての業務が含まれないが、同条三項は、監査補助業務であっても公認会計士としての名称を使用できるという意味に解すべきである。 3 法三四条の一二第一項の規定について  法三四条の一二第一項は、「監査法人は、その社員以外の者に監査又は証明の業務を行なわせてはならない」と規定し、法二条一項で規定されている「監査又は証明をすることを業とする」と同一の法律用語が用いられているところ、監査法人において、社員以外の者が補助者として業務に従事することまで禁止されたものではないことからすれば、法三四条の一二第一項にいう「監査又は証明の業務」の中には補助者として監査業務に従事することは含まれないというべきである。  したがって、法三四条の一二第一項の規定からすれば、法二条一項にいう「監査又は証明をすることを業とする」中に、補助者として監査業務に従事することが含まれないことは明らかである。  これに対し、被告は、社員の指揮監督下において監査証明業務に従事している以上は、監査補助者の行う監査証明業務は、いわゆる履行補助者の行う監査証明業務として、責任者的業務を執行する社員の行う監査証明業務と評価されると主張するが、法的には、「履行補助者の行う監査業務」は、「社員の行う監査証明業務」と評価されるのであって、「履行補助者の行う監査業務」自体 は評価されないのであるから、法三四条の一二第一項にいう「監査又は証明の業務」ではない。 4 法四七条の二について  また、補助者として「監査又は証明をすること」という業務に従事することも、法二条一項の業務に含まれるとすると、法四七条の二については、公認会計士又は監査法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て補助者としての監査業務に従事してはならないという意味となるが、右は、無資格者による監査補助業務への従事が許されるとの一般的な解釈とは全く相反することとなる。  これに対し、被告は、無資格者が監査補助業務に従事することが許されるのは、監査補助者の行う監査証明業務は、それが公認会計士又は監査法人の指揮監督下になされる限りにおいては、いわゆる履行補助者の行う監査証明業務として、これを指揮監督する公認会計士又は監査法人の行う監査証明業務と評価されることになるからであると主張するが、無資格者の行う監査証明業務が公認会計士又は監査法人の行う監査証明業務と評価されるのであるから、「無資格者の行う監査証明業務」は、法四七条の二に規定する「第二条第一項に規定する業務」ではないこととなる。 四 争点  以上によれば、本件の争点は、原告が、Aの依頼を受け、ココ山岡に係る平成元年三月末事業年度から平成八年三月末事業年度までの監査証明業務に補助者として従事していたことが、法三四条の一四に違反するか否かの点にある。 第三 当裁判所の判断 一1 法三四条の一四は、監査法人の社員は、自己若しくは第三者のためにその監査法人の業務の範囲に属する業務を行い、又は他の監査法人の社員となってはならないと規定するところ、法三四条の五によれば、法二条一項の業務及び当該監査法人の定款で定めるところによる法二条二項の業務等が右にいう「監査法人の業務の範囲に属する業務」に当たるということとなる。  そして、法四七条の二が、「公認会計士又は監査法人でない者は、法律に定のある場合を除く外、他人の求めに応じ報酬を得て第二条第一項に規定する業務を営んではならない。」と規定して、公認会計士又は監査法人でない者の業務の制限を定めているところ、右のとおり、単に「第二条第一項の業務」とせず、「他人の求めに応じ報酬を得て第二条第一項の業務」と規定していることからすれば、「法二条一項に規定する業務」とは、「財務書類の監査又は証明をすること」をいうもの であって、「他人の求めに応じ報酬を得て財務書類の監査又は証明をすること」ではないものと解するのが相当である。そうであるとすれば、「法二条一項の業務」といい得るか否かは、「他人の求めに応じ報酬を得て」いるか否かとは関係がないものということとなる。  そして、右の「財務書類の監査又は証明」とは、他人の作成した決算書類の記帳計算に不正誤謬がないかを検し、その決算書類が当該企業の真の財政状態及び営業成績を現わすように適当に調製されているかどうかを検査する行為、及び監査の結果に基づき他人の作成した財務書類が適法正確であることを確認する行為をいうものと解されるから、たとえ、被監査会社との間で、直接の契約関係を築かず、監査補助者としての立場から監査又は証明に関与したにすぎないとしても、右に述べた検査行為又は確認行為を行ったものである以上、右の立場に基づく関与を、法二条一項の業務を行ったものと評価することに妨げはないというべきである。  ところで、監査法人の設立については、社員を公認会計士に限定し、その数を五人以上とする等の一定の要件を設け(法三四条の四)、かつ認可制度を採用するとともに(法三四条の七)、法三四条の一四の規定を設けて、監査法人の社員については、監査法人の業務と競合する業務を行うことを絶対的に禁止しているが、これらは、いずれも、社員相互の緊密な協力関係を維持し、組織的な監査証明業務の主体としての監査法人の実体を確保し、その監査証明業務の内容の充実と独立性を維持する趣旨であると解される。そうであるとすれば、仮に、自らが被監査会社との間で契約を締結していない限り法二条一項の業務を行ったことにはならないと解した場合には、監査法人の社員として当該監査法人の監査証明業務の執行にたずさわる割合に比べて、他の公認会計士又は監査法人の監査補助者として監査証明業務にたずさわる割合が極めて高く、監査法人の社員としてその監査証明業務の執行にたずさわることが実際上困難なようなときにも、法三四条の一四の規定には反しないとして、かかる事態を許容せざるを得ないことになるが、このような事態は、社員相互の緊密な協力関係を維持し、組織的な監査証明業務の主体としての監査法人の実体を確保し、その監査証明業務の内容の充実と独立性を維持するとの法三四条の一四の趣旨に反する結果を招来することになりかねない。したがって 、このような解釈は、実質的にみても、法三四条の一四の解釈としては妥当性を欠くものというべきである。 2(一) これに対し、原告は、法三四条の一四は「自己若しくは第三者のために」との要件を定めるところ、監査補助業務はあくまで責任主体である他の公認会計士又は監査法人の指示又は指揮命令下で行われるのであるから、監査補助者は「自己若しくは第三者のために」監査証明業務を行う者には当たらないというべきであると主張する。  しかし、前記のとおり、法三四条の一四の規定は、社員相互の緊密な協力関係を維持し、組織的な監査証明業務の主体としての監査法人の実体を確保し、その監査証明業務の内容の充実と独立性を維持する趣旨であると解されるから、右の趣旨からすれば、「自己若しくは第三者のために」とは、その名称の如何を問わず、自己の計算又は第三者の計算においてすることをいうものと解すべきである。  そうすると、その監査の主体が当該公認会計士の属する監査法人でない場合に、監査補助者として監査証明業務を行うことは、自己又は第三者の計算において監査証明業務を行ったことにほかならず、本件においては、前記前提となる事実記載のとおり、ココ山岡の会計監査の受任者はAであり、原告が社員であった監査法人ではないのであるから、原告は、「自己若しくは第三者のために」に監査証明業務を行ったものというべきである。 (二) また、原告は、法二条三項の規定は、公認会計士が他の公認会計士又は監査法人の補助者として法二条一項の業務に従事することを妨げないとしており、右の規定からして、補助者として従事することが法二条一項の業務に該当しないことは文理上明らかであると主張する。  しかし、法二条三項は、財務書類に係る検査行為及び確認行為を内容とする法二条一項の業務を行う場合であっても、補助者としての立場でかかわる場合には、「他人の求めに応じ」て「業とする」とはいい難いことから、同項の定める場合には当たらないけれども、そのような業務についても、公認会計士として行うこともできる旨を定めたものと解される。  原告は、補助者として監査証明業務に従事することが法二条一項の業務に含まれるとすると、同項は、公認会計士である補助者は、被監査会社等委嘱者の求めに応じて報酬を得て監査業務に従事することを業とするという意味の条項となり、不合理であると主張するが、法二条一 項の業務とは、前記のとおり、財務書類に係る検査行為及び確認行為をいうものと解され、これにどのような立場でかかわるかまでを規定しているものとは解されないのであり、法二条三項が、「補助者として同項(法二条一項)の業務に従事する」と規定して、いかなる地位で従事するかという要件と法二条一項の業務の内容とを切り離しているのも、これを前提としているものというべきである。  したがって、法二条三項が存在することをもって、補助者として監査証明業務に従事することが、当然に法二条一項の業務に従事する場合に含まれないとは解されない。 (三) 原告は、法三四条の一二第一項は、「監査法人は、その社員以外の者に監査又は証明の業務を行なわせてはならない」と規定するところ、監査法人において、社員以外の者が補助者として業務に従事することまで禁止したものではないことからすれば、補助者として監査業務に従事することは、法三四条の一二第一項にいう「監査又は証明の業務」の中には含まれず、したがって、法二条一項の「監査又は証明の業務」の中にも含まれないと主張する。  しかし、監査法人において、社員以外の者が補助者として業務に従事しても、当該監査法人の社員の指揮監督下にある場合には、法三四条の一二第一項に違反するものとは解されないのは、当該監査法人の社員の指揮監督下にある限り、それが、当該社員のした行為とみなされることによるものであり、履行補助者の行う行為が同項に規定する監査又は証明の業務に含まれないと解されるためではないというべきである。  原告は、右のように解するときには、「履行補助者の行う監査業務」は、法的には、「社員の行う監査証明業務」と評価され、「履行補助者の行う監査業務」自体は評価されないのであるから、「履行補助者の行う監査業務」は、法三四条の一二第一項にいう「監査又は証明の業務」ではないと主張するが、履行補助者の行う業務が同項にいう「監査又は証明の業務」に当たるとしても、当該社員のした行為とみなされることにより、当該監査法人の「社員以外の者に監査又は証明の業務を行なわせ」た場合には当たらないと解するものであって、原告の右主張は失当というべきである。 (四) 原告は、補助者として「監査又は証明すること」という業務に従事することも、法二条一項の業務に含まれるとすると、法四七条の二については、公認会計士又は監査法人 でない者は、他人の求めに応じて報酬を得て補助者としての監査業務に従事してはならないという意味となるが、右は、無資格者による監査補助業務への従事が許されるとの一般的な解釈と全く相反すると主張する。  しかし、法二条一項の業務とは、前記のとおり、財務書類の検査行為及び確認行為を行うことをいうものと解すべきところ、法四七条の二は、他人の求めに応じ報酬を得て公認会計士又は監査法人以外の者が法二条一項の業務を営むことを禁止しており、無資格者の監査補助業務への従事が許されるというのも、当該監査補助業務への従事が、監査法人の社員又は公認会計士の指揮監督下にあり、監査法人の社員又は公認会計士の監査証明業務とみなされることによるか、あるいは、それが「他人の求めに応じ」報酬を得て監査証明業務を「営んでいる」といえないことによるものというべきであり、前記のような解釈を採った場合には、無資格者が監査補助者として、監査証明業務に従事することが許されるとの一般的な解釈と相反することになるわけではないから、原告の主張は失当である。 二 以上によれば、たとえ、補助者として、監査証明業務にたずさわったにすぎないとしても、右は、法二条一項の業務を行ったものというべきであり、法二条一項の業務は、監査法人の業務の範囲に属する業務に当たるのであるから、監査法人の社員たる公認会計士がかかる業務に従事した以上、法三四条の一四に違反するものというべきである。  そして、本件においては、前記前提となる事実記載のとおり、原告は、平成二年九月から平成四年九月までは監査法人芹沢会計事務所の社員、平成五年七月からは東京赤坂監査法人の社員の地位にありながら、ココ山岡との間で財務書類の監査契約を締結したAの依頼を受け、ココ山岡に係る平成元年三月末事業年度から平成八年三月末事業年度までの監査証明業務に補助者として従事し、売上及び売上債権関係の勘定科目の監査を行って、これに対する報酬を受け取ったものであるところ、右は、監査法人の社員が自己又は当該監査法人以外の第三者の計算において、財務書類の監査という当該監査法人の業務の範囲に属する業務を行ったものというべきであるから、法三四条の一四に違反し、これを前提として、法三一条に基づき、原告に対し、戒告の懲戒処分をすることとした本件処分は適法である。 三 よって、原告の請求は理由がないから棄却する こととし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第二部 裁判長裁判官 市村陽典 裁判官 阪本勝 裁判官 村松秀樹

作者: 管理者

更新日:2008年12月2日 2時9分

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0264)行政判例平成13年その4182924944

H13. 3.30 京都地裁 平成07(行ウ)2 消費税賦課決定処分取消請求事件

H13. 3.30 京都地裁 平成07(行ウ)2 消費税賦課決定処分取消請求事件  主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。  事実 第一 当事者の求めた裁判 一 請求の趣旨 1 被告が、平成5年3月9日付で原告に対してした平成2年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成2年課税期間」という。)及び平成3年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成3年課税期間」といい、平成2年課税期間と合わせて「本件各課税期間」ともいう。)に係る原告の消費税の各決定処分(以下「本件決定処分」という。ただし、異議決定により取り消された部分を除く。)のうち、納付すべき税額が、平成2年課税期間については54万8900円、平成3年課税期間については53万6300円をそれぞれ超える部分、及びこれらに対する平成5年3月9日付で原告に対してした無申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい、本件決定処分と合わせて「本件各処分」という。)を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 二 請求の趣旨に対する答弁  主文と同旨 第二 当事者の主張 一 請求原因 1 原告は、京都市α347番地所在の○○○ビル1階において、飲食業(ラウンジ)を営む者である。 2 原告は、本件各課税期間に係る消費税について、法定の申告期間内に確定申告をしなかった。 3 被告は、平成5年3月9日、原告に対し、原告の本件各課税期間に係る消費税について、別紙・課税の経緯の「決定処分」欄のとおり、控除対象仕入税額を0円として本件決定処分及び本件賦課決定処分をした。 4 原告は、同年4月14日、被告に対し、本件各処分について異議申立をしたところ、被告は、同年7月26日、原告に対し、別紙・課税の経緯「異議決定」欄のとおり、本件決定処分及び本件賦課決定処分の一部を取り消した。 5 原告は、平成5年8月12日、国税不服審判所長に本件各処分(異議決定により一部取り消された後のもの。以下同じ。)に対する審査請求をしたところ、同所長は、平成6年9月30日、同審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をし、裁決書謄本は、同年10月29日、原告に送達された。 6 しかし、本件各処分は、いずれも、次のとおり、違法であって、取り消されるべきである。 (一) 被告は、本件各処分の調査(以下「本件調査」という。)に際し、① 事前の通知をせず、突然臨場したり、② 原告の調 査理由の開示請求に対しその必要性や理由を全く示さず、③ 原告が依頼している者の立ち会いがあることを理由に直接の調査をせずに帰るなどしている。かかる調査に基づく本件各処分は違法である。 (二) また、本件各処分は、原告が、本件各課税期間中に後記のとおりの課税仕入れをし、同課税仕入れに係る帳簿等を保存し、税務調査に際して被告の担当職員にこれを提示したにもかかわらず、被告が、立会人がいたことを理由に、上記書類の確認義務も尽くさずに、帳簿等の保存がないとして、仕入税額控除を否定してした違法な処分である。 7 よって、原告は、被告に対し、本件決定処分のうち、納付すべき税額が平成2年課税期間については54万8900円、平成3年課税期間については53万6300円をそれぞれ超える部分、及びこれに対する本件賦課決定処分の取消しを求める。 二 請求原因に対する認否 1 請求原因1ないし5の事実は認める。ただし、裁決書謄本が原告に送達された日付は不知。 2 同6の主張は、いずれも争う。本件調査につき、① 調査実施の日時場所を事前に通知することは、質問検査を行う上で法律上の要件とされていない。② 原告から調査理由の開示を求められたことはないし、調査を実施する際に調査の理由や必要性を告知することは、質問検査を行う上で法律上の要件とはされていない。また、③ 被告の担当職員は、原告に対し、事業内容などについて、直接、質問検査を行った。 三 被告の主張 1 原告の営む飲食業(ラウンジ)に係る取引は、事業として対価を得て行う役務の提供に該当する。 2 原告の本件各課税期間における納付すべき消費税額は次のとおりであり、この範囲内でされた本件決定処分は適法である。 (一) 原告の売上金額の合計(課されるべき消費税額を含む。)は、平成2年課税期間が1億0826万8314円、平成3年課税期間が9755万9368円である。 (二) 上記(一)に基づいて、消費税法(ただし、平成6年法律第109号による改正前のもの、以下「法」という。)28条、国税通則法(以下「通則法」という。)118条1項に従って算出された課税標準額は、平成2年課税期間が1億0826万8000円、平成3年課税期間が9755万9000円である。 (三) 上記各課税標準額に対する消費税額は、平成2年課税期間が324万8040円、平成3年課税期間が292万6770円である 。これに通則法119条1項を適用し、100円未満の端数を切り捨てると、課税標準額に対する消費税額(法30条1項参照)は、平成2年課税期間が324万8000円、平成3年課税期間が292万6700円となる。 3 原告は、本件各課税期間に係る消費税について、法定の申告期間内に確定申告をしなかったから、通則法66条1項本文に従い、平成2年課税期間の無申告加算税として48万6000円を、平成3年課税期間の無申告加算税として43万8000円を納付すべきである。 四 被告の主張に対する認否 1 被告の主張1、2の事実は認める。 2 同3は争う。 五 原告の主張(仕入れに係る消費税額の控除) 1 原告は、本件各課税期間中に、別表①及び②の「① 年月日」、「② 課税仕入れ」、「③ 金額」、「④ 仕入先氏名又は名称」欄記載のとおりの課税仕入れ(以下「本件課税仕入れ」という。)をした(同金額は、いずれも消費税額を含む金額である。)。 2 別表①の関係 (一) 原告は、別表①の番号1ないし1333記載の課税仕入れについて、同表の「請求書」、「領収書」、「帳簿」欄記載の各書類(同表の「甲号証」欄の証書)を、いずれも、法令の定めに従って所持して保管しており、本件各処分に対する前記の異議申立手続において書証として提出し、本件訴訟においても、別表①の「甲号証」欄とのとおりの各甲号証として提出している。 (二) 上記請求書等の各書類のうち、「請求書」及び「領収書」には、「年月日」、「資産又は役務の内容」、「対価」、「作成者の名称」欄記載の事項が、「帳簿」には、「年月日」、「資産又は役務の内容」、「対価」、「相手方の名称」欄記載の事項が記載されている。 3 別表②の関係(ホステス報酬分) (一) 原告は、別表②の番号1ないし455記載の課税仕入れにいて、同表の「帳簿」欄記載の各帳簿(同表の「甲号証」欄の証書)を、いずれも作成の日から所持して保管しており、前記の異議申立手続において書証として提出し、本件訴訟においても、別表②の「甲号証」欄のとおりの各甲号証として提出している。 (二) 上記各帳簿には、別表②の「① 年月日」、「② 課税仕入れ」、「③ 金額」、「④ 仕入先氏名又は名称」欄記載の事項が記載されている。 4(一) 上記2、3の請求書や帳簿等(以下「本件帳簿及び請求書等」という。)は、いずれも、法30条8項所定の帳簿(以 下「本件帳簿」という。)又は9項所定の請求書等(以下「法定請求書等」という。)に該当し、これらを補完するその他の証拠によって、本件課税仕入れは明らかに認められる。そして、原告が本件帳簿及び請求書等を保存(法30条7項所定)していたことは動かし難い事実である。 (二) 本件各課税期間に係る原告の消費税額の算定に当たり、前記の課税標準額に対する消費税額から、平成2年課税期間の各仕入に係る消費税額である266万3600円、平成3年課税期間の各仕入に係る消費税額である260万5425円を、いずれも、仕入税額控除として控除すべきである。 六 原告の主張に対する被告の反論 1 原告の主張1ないし3の事実は否認する。 2 同4の主張は争う。 3 法30条7項の「保存」とは、単に客観的・物理的な意味での保存のみをいうのではなく、税務職員の適法な税務調査に応じて直ちに提示できる状態での保存をいうものと解すべきである。税務調査の際にその提示を求めたにもかかわらず、事業者がこれを拒絶した場合は、同項の帳簿又は請求書等を「保存しない場合」に該当する。そして、次のとおりであるから、本件帳簿及び請求書等が書証として提出されていても、法30条7項所定の「帳簿又は請求書等を保存しない場合」に該当する。 (一) 被告の部下職員で国税調査官であるAは、平成4年8月26日から平成5年2月中旬までの間、原告に対し、何度も、帳簿書類等を提示して原告の所得税及び消費税についての調査に協力するよう繰り返し要請し、消費税の仕入税額控除については、それに係る帳簿又は請求書等の保存がない場合には適用がなく、その提示が必要であることについて説明し、帳簿等を提示して本件調査に協力するように繰り返し要請した。しかし、原告は、第三者の立会に固執し、結局、上記調査に協力せず、本件帳簿及び請求書等も含め、その帳簿書類を一切提示しなかった。 (二) 被告の職員であるB上席調査官及びAは、平成5年1月27日及び同年2月12日、原告の店舗に赴いた。原告は、両日とも、調査に関係のない第三者を同席させていたので、Bらは、調査に関係のない第三者の立会は認められない旨を説明し、その退席を要請した。しかし、原告は、上記第三者を退席させることなく、「帳簿書類を用意していない。」「まともな帳面でなく、今日はそちらの所得計算を聞いてからと思い、帳面を用意していない 。」と言い、結局、調査への協力をせず、帳簿書類は一切提示しなかった。 4 のみならず、以下のとおり、原告が法令で定められた保存期間、継続して、法定記載事項を具備した法定帳簿や法定請求書等を保存していたとはいえない。 (一) 法30条8項1号は、「帳簿」について課税仕入れの相手方の氏名又は名称、課税仕入れを行った年月日、課税仕入れに係る資産又は役務の内容、課税仕入れに係る支払対価の額の記載を、同条9項1号は「請求書等」について書類の作成者の氏名又は名称、課税資産の譲渡等を行った年月日、課税資産の譲渡等にかかる資産又は役務の内容、課税資産の譲渡等の対価の額、書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称の記載(以下、まとめて「法定記載事項」ともいう。)を、いずれも厳格に要求しており、これら以外の資料によっては仕入税額の控除を許さない趣旨である。 (二) 本件訴訟において、原告が、本件帳簿及び請求書等を甲100-1以下として提出したのは、本件が提訴された平成7年1月10日から3年以上を経過した平成10年9月30日の本件第17回口頭弁論期日においてである。原告は、本件訴訟の係属後も同期日ころまで、本件帳簿及び請求書を集計する作業をしていた。また、本件帳簿及び請求書等には、発行者とは異なる筆跡による書き込みがされた請求書があるなど事後的な補完等が窺える。 (三) 甲100-1、2は、平成2年及び3年分の銀行帳であるが、「年月日」欄の日付は、課税仕入れを行った年月日とは認められず、甲101-1、2の伏見信用金庫本店営業部の当座預金お取引明細表の「お取扱日」の日付とも合致しない。また、上記銀行帳は、法30条8項1号ハまたはイのいずれかの要件が欠けている。  甲101-1、2は、課税仕入れの相手方の作成に係るものではないから、法30条9項の請求書には該当しない。更に、法30条9項1号のロ、ハの要件を欠く。  甲102、103(枝番を含む。)は、課税仕入れに該当しない給与の部分と報酬の部分を区別できないから、法30条8項1号ハの要件を欠き、更に同号イの要件も欠く。  甲104ないし甲106(枝番を含む。)は、法30条8項、9項の帳簿や請求書等のいずれにも該当しないことは明らかである。  甲200ないし211については、法30条9項1号のイないしホのいずれかの要件を欠く。  甲213ないし239の3は、本件 訴訟提起後5年以上経過した後に提出されたもので、その内容は特に信用性に乏しい。 七 原告の再反論 1 法30条7、8項の帳簿や請求書等の保存とは、その文言どおり、事業者がこれらを所持・保管するごとを意味し、税務調査の際に提示するかどうかは保存の有無とは直接影響しない。しかも、上記の保存は、結局、課税仕入れの立証方法を限定する意味しか持ち得ない。 2 原告は、Aによる税務調査の際、帳簿等をAに見えるように用意していたにもかかわらず、Aは、消費税の調査をしていることも明らかにしないまま、民主商工会の事務職員の同席を口実に、公務員の守秘義務や税理士法違反のおそれがあるとして、これらの帳簿等を見ようとしなかった。原告は、平成5年2月4日には、Aとの約束に従い、帳簿等を東山税務署に自ら持参したが、居留守を使われ、調査に応じてもらえなかった。Aは、その後、Bを伴い原告方を訪れたが、民主商工会の事務職員がいることを確認し、そのために調査ができないとして、それ以上の調査を進めなかった。Aらは、いつでも帳簿を確認することができる状態にありながら、民主商工会の事務職員の立会を口実に見ようとしなかったのであり、税務職員として帳簿等の確認義務を尽くしていない。これに対して、原告は、税務調査に誠実に対応したものである。 3 法は、厳格なインボイス方式を採用したものではなく、従来の所得税や法人税の計算のために記載していた帳簿等をそのまま使用することができるようにすることによって納税者の負担を軽くするための制度を採用したものである。したがって、法定記載事項を被告主張のように厳格に解すべきではない。そのように緩やかに解釈するのが立法者の意図であったのである。中小零細業者においては、帳簿の記帳や請求書の領収書等の保存の実態は決して完備しているものではない。被告主張のように厳格に法定記載事項を要求するのは、特に原告のような飲食業者における実態とかけ離れた解釈である。  理由 一 請求原因1ないし5の事実及び被告の主張1、2の各事実は、当事者間に争いがない。 二 上記当事者間に争いのない事実、証拠(甲4ないし6、10、13、100の1及び2、101の1及び2、200ないし239の各枝番、乙1ないし4、証人A、C、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。 1 原告(昭和17年生)は、京都 市β所在の肩書住所地に居住し、同市α347番地所在の○○○ビル1階の店舗において、「G」の名称で飲食業(ラウンジ)を営む者である。 2 原告は、自宅の一室を同店の事務所にもしており、原告の夫であるCも同店を手伝っていた。同店の営業に係る売上伝票等は、原告又は従業員のDが記載していた。原告は、民主商工会に属し、所得税の計算等は民主商工会に委ねていた。 3 原告は、平成4年3月ころ、被告に対し、原告の平成3年分の所得税の確定申告をしたが、本件各課税期間に係る消費税について、法定の申告期間内に確定申告をしなかった。 4 被告の部下職員で国税調査官のAは、平成4年8月26日、同年9月11日、原告が提出した平成元年分ないし平成3年分の所得税の確定申告書に記載された所得金額が適正か否か、原告には消費税の申告が必要であったか否かを調査するため、原告の自宅を訪れた。しかし、原告はいずれの日も自宅に不在であった。また、同月28日、Aは、原告の自宅を同様の目的で訪れ、原告に身分証明書を提示して、帳簿書類の提示を求めた。しかし、原告は、「ちゃんと計算して申告しています。」などと答えただけで、これには応じなかった。 5 被告の部下職員は、その後、同年9月ころから、原告の取引先に対する反面調査を行った。 6 Aは、同年11月18日、原告の自宅を訪れたところ、原告は不在であったが、折り返し原告からされた電話のやり取りで、原告に帳簿の提示と説明を求めた。原告は、自分一人では十分説明できないので、民主商工会の者を同席させたいと答えたが、Aは第三者の立ち会いは認められない旨述べた。 7 Aは、平成5年1月21日、原告の店舗を訪れたが、シャッターが降りており、原告に会うことができなかったので、「所得税、消費税調査の件でうかがった。」「1月22日午後5時前ころ必ず連絡されたい。」「連絡のない場合は更正処分することになる。」「消費税については、仕入税額控除に関する帳簿書類の提示がない場合は、仕入税額控除は認められない。」旨記載した連絡せん(乙6参照)を投函した。 8 原告は、前記の連絡せんを読み、同月22日午後5時ころ、Aに電話し、同月27日午後1時に店舗で調査を受けることを約束した。 9 A及びBは、同月27日午後3時ころ、原告の店舗を訪れたところ、原告が夫であるC、民主商工会の職員であるE、Fを伴っていたことから、B は、「立会人がいたら調査できない、守秘義務違反になる。帰らしてもらう。」と言った。C、E、Fは、Aらに対し、免許証を見せたり、名乗ったりしたものの、退席することはなく、Cは、前記の連絡せんを取り出してAに抗議した。原告とAは、2人で店の奥に移動し、Aが、原告に帳簿類の提示を求め、原告の所得を1000万円位と把握している旨告げると、原告は驚いた様子で、「1000万円の所得金額は絶対にない。」「帳簿書類は持参していない」「帳面を見せても、間違っているところがあるかもしれない。」などと答えた。原告は、「所得金額を押しつけてくるんじゃないですか。」と問い、Aは、「調査の過程であり帳簿の提示があれば変わることがあるが、帳簿書類の提示がない場合には、連絡せんに記載していたようになる。」と答えた。 10 Aは、平成5年2月4日、Cから、原告が同日午後に税務署に帳簿を持参して出向く旨の連絡を受け、この旨を統括官とBにも告げ、税務署内で待っていた。  ところが、原告は、Cを含む総勢約10名の者と共に、同日3時ころ、東山税務署を訪れ、申入書(乙5)を、同税務署の総務課に提出し、抗議した。結局、総務課は、原告らをAに取り次がなかったので、原告らとAは面会しなかった。上記申入書の内容は、税務署の職員から、一方的に、帳簿がなければ独自調査で得た資料をもとに推計し、更正処分をすると言われ、その内容について詳しいことは説明されなかった、また話し合う機会を設けるための連絡をとったが、税務署にきてもらえなければ話しはしない、店舗にはいかない、と言われ、こちらの要求を聞き入れない、税務署の都合に合わせる態度は納得できない、というもので、帳簿類を持参したとか見て欲しい旨の記載はなかった。 11 Aは、その後、原告の自宅へ電話し、原告に、更に、帳簿類の提示がなければ、仕入税額の控除をすることができない旨を告げ、結局、同月12日にAが原告の店舗を訪れることになった。 12 A及びBは、同月12日、原告の店舗を訪れて調査をしようとした。しかし、原告は、Cのほか、他に1名の男性を同席させ、所得が約1000万円となる根拠を示すよう求めた。結局、Aは、原告と2人で奥のボックス席へ移って所得額に関するやり取りや原告が提出した消費税の簡易課税の届出の説明をし、再度、帳簿類の提示がなければ仕入税額控除ができないことも説明した後、帳簿類の提示を求めたが、原告は用意していないと答えた。Aは、確定申告の時期になるので、店舗へは行けないので、帳簿類を持参するよう求めたところ、原告は、帳簿を持参する日を同月15日に連絡するといった。 13 原告は、同月15日、Aに電話し、同月22日に帳簿等を東山税務署に持参する旨告げたが、原告は、同日、東山税務署に帳簿類を持参することはなかった。 14 被告は、平成5年3月9日、原告に対し、本件決定処分及び本件賦課決定処分をするとともに、原告の平成3年分の所得税の更正処分及び41万1500円の過少申告加算税の賦課決定処分を行った。 15 原告は、同年4月14日、被告に対し、本件各処分について異議申立をし、更に、前記所得税の更正処分等についても異議申立をした。 16 原告は、同年6月18日、東山税務署に対し、前記異議の手続において帳簿類を提出した。その内訳は、① 金銭出納帳1冊(平成元年ないし3年)、② 銀行勘定帳2冊(昭和62年12月から平成4年5月)、③ ボトル在庫帳1冊(平成3年末から平成4年10月)、④ 売上明細帳40冊(平成元年7月から平成4年12月)、⑤ 当座預金お取り引き明細表1冊(平成2年1月から平成3年12月)、⑥ 売掛帳1冊(平成2、3年分)、⑦ 収支日計表12冊(平成3年)、⑧ 賃貸借契約書6通(第一旭ラーメン駐車場等)、⑨ 源泉所得税納付書・領収証書2冊(平成3、4年)、⑩ 出勤時間表、タイムガード一式(平成3年11月26日から平成4年12月25日)、⑪ お勘定書・同付属日報一式(平成3、4年)、⑫ 入金及び出勤伝票一式(平成3、4年)、⑬ 領収証綴り(対従業員用、平成3、4年)、⑭ クレジット振込明細一式(平成3、4年)、⑮ 必要経費に係る領収書、請求書綴り一式(仕入れを含む。平成3、4年)であった(甲4号証参照)。 17 被告は、同年7月26日、原告に対し、各課税標準額を計算し直し、本件各課税期間の控除対象仕入税額はいずれも0円として、別表・課税の経緯の異議決定欄のとおり、本件決定処分及び本件賦課決定処分の一部を取り消す旨の異議決定をした。 18 他方、被告は、同日、原告に対し、異議申立において提出された前記の各帳簿類の中身が、原告の事業実態に則した妥当なものであるとして、平成3年分の原告の所得税更正処分の一部を取り消す旨の異議決定をした。 三 まず、請 求原因6(一)(本件調査の違法)について検討する。 1 税務調査の手続に仮に違法があっても、原則として、そのことが理由となってそれに基づく課税処分が違法となることはないものと解するのが相当である。そして、税務調査による質問検査の範囲、程度、時期、場所等の実定法上特段の定めのない実施の細目については、質問検査の必要があり、かつこれと相手方との私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な裁量に委ねられていると解される(最判平成5年3月11日・訟月40巻2号305頁参照)。 2 前記二の認定事実によっても、本件各処分に至る調査の手続に違法な点はなく、Aが、本件調査において、事前通知をせず、調査の必要性や理由を示さなかったことも、前記の認定事実の下においては、未だ税務職員としての裁量を逸脱するものではなく、違法であるともいえない。また、税理士以外の第三者の立会を許すか否かも、調査担当者の合理的な裁量に委ねられており、A及びBが、本件調査において、第三者の立会があることを理由にそれ以上の調査を進めなかったとしても、それも違法とはいえない。 3 むしろ、本件調査の手続は、適法であったというべきである。 四 原告が主張する仕入に係る消費税額の控除について検討する。 1 法30条1項は、事業者(法2条1項4号)が国内において課税仕入を行った場合には、当該課税仕入を行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から上記課税仕入に係る消費税額等を控除する旨を規定する。これがいわゆる仕入税額控除である。そして、同条7項は、上記1項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れについては、適用しない、ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかったことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない旨を規定する。更に、同条8項は帳簿について、同条9項は請求書等についてそれぞれ記載されていなければならない各法定記載事項を具体的に列挙している。また、同条10項の委任に基づく消費税法施行令(平成7年政令第341号による改正前のもの、以下「令」という。)50条1項では、仕入税額控除の適用を受けようとする事業者は、法定帳簿又は法定請求書等を整理し、法定帳簿に ついてはその閉鎖の日の属する課税期間の末日の翌日から2ヶ月を経過した日から7年間、法定請求書等についてはその受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、これを納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これに準ずるものの所在地に保存しなければならない、と規定する。  更に、法は、一般的な記帳義務として、法58条において、事業者は、政令で定めるところにより、帳簿を備付けてこれに行った資産の譲渡等又は課税仕入に関する事項を記録し、かつ当該帳簿を保存しなければならない旨を規定する。 2 上記各規定及び法の他の規定によれば、仕入税額控除は、広く消費税を課税する結果、取引の各段階で課税されることによる税負担の累積を防止するため、それぞれの取引の前段階の取引に係る消費税額を控除することを認めたものと解される。そして、法30条7項は、申告をする納税者や課税庁において多量の課税仕入の存否及びそれに係る消費税額を迅速かつ正確に把握して事務処理をするためには、明確な内容の帳簿や請求書等が必要であるところから、かような法定帳簿や法定請求書等の保存がない場合を仕入税額控除をしない場合の要件(仕入税額控除の不適用要件)として定めたものと解される。  したがって、同条7項の規定は、租税実体法規としての性質を有することは明かであって、上記規定の文言や法の他の規定に照らしても、上記7項の規定が原告が主張するように単に課税仕入の立証方法を限定する意味をもつにすぎないものと解することはできない。 3 次に、法30条7項の保存とは、法定帳簿又は法定請求書等が単に納税者の下に存在しているだけでは足りず、法30条7項の趣旨が前記のとおり大量の課税仕入に係る消費税額を迅速かつ正確に把握するためのものであって、その把握をするのは、まず、申告をする納税者、それに課税処分等を行う課税庁であり、課税庁においては税務調査においてその把握が必要になることに照らすと、税務職員の質問検査権に基づく適法な調査により直ちに確認できるような状態での保存を意味するものと解すべきである。被告も、上記の保存は税務職員の適法な税務調査に応じて直ちに提示できる状態での保存をいうものであると主張するが、それは前判示のような意味における限りにおいて正当である。そして、税務調査において、税務職員が納税者に対し、社会通念上当然に要 求される程度の努力を行って、適法に法定帳簿や法定請求書等の提示を求めたのに対し、納税者がこれを明確に拒絶したと認められる場合には、納税者は、そもそも法定帳簿等を保管していないか、又はそれらを何らかの形で保管していても、少なくとも以上のような意味での保存がなかったとの推認が強く働くものと解すべきである。 4 なお、被告は、事業者が税務調査の際に法定帳簿や法定請求書等の提示を求められながらこれを拒否した事実があり、その後に更正等の課税処分がされた場合には、常に、法30条7項の「保存がない場合」に該当し、上記のように推認されない場合があることを一切認めないとの趣旨を主張しているものと解される。  確かに、法62条では、課税庁の職員は、消費税に関する調査について必要があるときは、事業者等に対し、質問し、又はその者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査することができるとし、法68条では、上記の質問検査に対して答弁せず、又は検査を拒み、妨げ若しくは忌避した者は10万円以下の罰金に処せられることとされており、事業者には、税務調査に協力する義務がある。また、税務当局としては、正確に課税要件の事実を調査するためには納税者の協力が不可欠であることからしても、上記の主張のように、提示を拒否したことを保存がない場合に擬制して解することにも課税手続上の合理性があることは確かである。  しかし、法30条7項は保存しない場合と規定しているのみで、その他法においても同条10項に基づく政令においても、課税庁側への提示を積極的に求める趣旨の規定はない。適法な税務調査による提示要求に対して事業者が法定帳簿等の提示を拒否したことを、上記に判示するような内容の保存がない場合と完全に同視することは困難であるといわざるを得ない。被告の上記の主張は採用できない。 5 このように、「保存がない」といえるか否かについては、個々の具体的な事例ごとに、税務調査の経緯、態様、それに対する事業者の対応等の諸事情を総合判断して決すべきものと解される。 6 以上の判示に従って、まず、本件調査の当時、前記のような意味での保存がなかったといえるか否かについて検討する。 (一) 前記二で認定した事実関係によれば、原告は、本件調査が開始された後の平成4年11月ころから、被告の部下職員に所得税及び消費税の調査のため、帳簿類の提示を求められ、特に、平 成5年1月21日に連絡せんで、消費税については、仕入税額控除に関する帳簿書類の提示がない場合は仕入税額控除は認められない旨を明確に告げられ、その後は、本件調査の過程で、本件各処分がされた平成5年3月9日ころまで、くり返し、同趣旨の説明を受け、帳簿類の提示を再三求められたもので、これらのことは、十分に承知していたものと認められる。また、本件調査の際に帳簿類を持参してAやBに提示したり、あるいは、帳簿類を被告の税務署に持参する機会も十分にあったということができる。 (二) また、前記判示のとおり、AやBによる本件調査にはいずれも違法な点はなく、適法なものであって、AやBは、社会通念上、当然に要求される程度の努力は尽くしたものといい得る。そして、原告は、納税者として、これに協力すべき義務を負っていたものといわざるを得ない。 (三) にも拘わらず、原告は、本件調査の際のこのような再三に亘る帳簿類の提示要求に対し、これに応じることはなく、本件調査の過程を通じて、これを明確に拒絶したものというべきである。原告は、本人尋問の中で、店舗において本件調査を受けた際、帳簿類を紙袋に入れて持参しており、それを店舗内のソファーの上に置いていたなどと供述するが、上記供述を直ちに採用することはできない。 (四) また、原告は、本件調査を受けた際、「帳簿書類は持参していない。」「帳面を見せても、間違っているところがあるかもしれない。」とも答えている。 (五) このような本件調査の経過をみると、原告は、本件調査の当時、本件各課税期間に係る帳簿類を、少なくとも前記で判示したような保存はしていなかったことが強く推認されるものというべきである。 (六) 確かに、原告は、本件各処分に対する異議の申立をし、平成5年6月18日、上記異議の手続において、前記二の16の①ないし⑮の各帳簿類を提出しており、しかも、上記各帳簿類の提出によって、被告は、それらが原告の事業実態に即した妥当なものであるとして、平成3年分の原告の所得税の更正処分の一部を取り消す旨の異議決定をしており、更に、原告は本件訴訟において本件帳簿及び請求書等を書証として提出している。  しかし、上記の①ないし⑮の各帳簿類と本件帳簿及び請求書が完全に同一かどうかは不明であり(ただし、証拠上、その大半は、同一のものと認められる。)、また、上記各帳簿類が被告に提出され たのは、本件調査において原告が帳簿類の提示を求められた平成4年11月ころから約半年が経過した後のことである。更に、被告が妥当なものと判断したのは、あくまで、原告の所得税に関する限りにおいてであることは明らかである。所得税と異なり、消費税の仕入税額控除に係る帳簿については、各課税仕入れに対する消費税額が明確になるような法定帳簿等が求められるのであり、所得税について被告が異議決定において前記のような判断をしたことから、必ずしも、提出された帳簿類について、本件調査の当時において、前判示の意味の保存があったことにはならない。また、原告が、本件訴訟において、法定帳簿等の書証であるとして別表①及び別表②の各甲号証(ただし、後記の甲213ないし239を除く。)を提出したのは、本件訴訟が提起された平成7年1月10日から3年以上経過した本件第17回口頭弁論期日であり、甲213ないし239(枝番を含む。)の請求書及び領収証については、更に、本件提訴から5年以上を経過した平成12年5月26日の本件第25回口頭弁論期日においてである。なお、上記各甲号証の中には、例えば、甲200の2の領収証には「アラレ他」、甲200の6「かきの種」「カリントウ」、甲200の11「贈答品」、甲205の30「チャーム」等の作成者とは別人が事後的に書き加えたと窺われる記載があるものが多数存在するほか、甲200の75、甲201の29、201の40、201の43、201の114の各領収証はその日付が平成2年とあるのを平成3年に書き直されたことが窺われる。そして、原告は、その本人尋問においても、領収証の中には原告らが書き込みをしたものがあることは自認している。  いずれにしても、異議や審査請求の段階で帳簿類が提出され、本件訴訟で、本件帳簿及び請求書等が提出されたからといって、本件調査に対する原告の対応が前記のとおりである以上、本件調査の当時、本件帳簿及び請求書等を原告が何らかの状態さ所持していたものであるとはいえるとしても、少なくとも、それが前判示の意味の保存がなかったとの推認が覆るものではないというべきである。 (七) 以上のような諸事情を総合すると、原告は、本件各処分の前の本件調査当時(それは、法令所定の保管期間中である。)、継続して、本件帳簿及び請求書等を、前判示のとおりの意味での保存はしてはいなかったものと推認する のが相当であり、そのように推認されても致し方ないというべきである。 7 そうすると、その余の点につき、判断するまでもなく、本件各課税期間の原告の消費税については、法30条7項に